山廃酒母
速醸酒母
 
 
大吟醸
精米を50%以下に精米し、低温発酵させた時には「大吟醸酒」が名乗れます。しかし米の種類までは規定されていません。香りを引き出すため、また酸をおだやかにさえるために醸造用アルコールが少量添加されます。この添加技術は発酵の最終段階でのもっとも技量の差がでる技術と言えます。
大吟醸酒の最大の特徴は、フルーティな香りにありますが、最近は科学が発達して、人工的にそれらしい香りを添加する技術(ヤコマン)も高度に発達し、なかなかほんものに巡りあえないのが現状です。まして美味しいと感動するようなほんものとなると、めったにありません。最近では「バイオ酵母」を使用した、香りのやたらとたつ味とのバランスを欠くお手軽大吟醸も大流行です。
 
純米大吟
純米こそほんもの、吟醸こそ日本酒最高の酒造技術の極み、ということで誕生した大吟醸酒です。少量のアルコール添加は純米酒に出がちな酸をほどかす日本人の工夫です。農産物加工品のワインと同様の発想はまったく間違いです。日本酒造りは、まずどのようなお酒を造るかという設計図を引いて、それに合う米、そして精米歩合、麹の作り方、酒母をどの方法で育てるか、仕込み配合や汲み水歩合をどうするか、発酵タンクの温度管理はどうするか、 などなど計画を立て、造りに入ります。良いぶどうが収穫できたからきっと良いワインになるでしょう、などというものではなく、出来てしまったお酒ではなく、計画通りのお酒を造るのが日本酒造りです。アルコール添加もその技法、決して増量剤などではないのです。一万年前に地球上に同時に発生した世界の三大銘酒と呼ばれるワイン、ビール、日本酒はそれぞれの気候風土、発想も違う民族によって誕生したのです。

ここでも「バイオ酵母」を使用した、香りのやたらとたつ味とのバランスを欠くお手軽純米大吟醸も大流行です。

 
吟醸
「吟醸」は精米を60%以下にした米を使い、特有の吟醸造りで造られたお酒です。大吟醸酒同様に米の種類までは規定されていません。香りを引き出すため、また酸をおだやかにさえるために醸造用アルコールが少量添加されます。
一部のすぐれた酒蔵の造る吟醸酒の中には限りなく大吟醸酒に近いものもありますが、一般的には「アルコール添加酒」の中の「本醸造酒」の上の「特別本醸造酒」、このさらに上級の「アルコール添加酒」と考えるのが妥当です。精米が徹底的に行われ、低温で発酵、そして搾った時の出る粕が多く、結果としてややフルーティで上品、という感じです。大吟醸酒同様にお燗は不向きなお酒となっていることもやや大吟醸酒に近いと言えましょう。
最近は科学が発達して、人工的にそれらしい香りを添加する技術(ヤコマン)も高度に発達し、なかなかほんものに巡りあえないのが現状です。まして美味しいと感動するようなほんものとなると、めったにありません。最近では「バイオ酵母」を使用した、香りのやたらとたつ味とのバランスを欠くお手軽吟醸も大流行です。吟醸程度の精米では、たとえ低温の中で醸造したとしてもさほどのフルーティさは出ません。
 
純米吟醸

純米吟醸酒は吟醸の仲間と言うよりは純米酒の部類に入ります。日本酒に限らずワインでも醸造中に誕生する醸造酸と呼ばれる酸をいかに押さえるかが最大の課題ですが、日本酒ではアルコールを添加するという技術でこれをクリアーしています。そのほかに精米歩合を上げると酸が少なくなることから、60%までの精米をして純米酒を仕込むことが行われています。この製造の規格が吟醸を名乗れることから「純米吟醸」と名乗っている高度精米純米酒が多く出回っています。特に最近では純米吟醸によく見られる「バイオ酵母」を使用した、香りのやたらとたつ味とのバランスを欠くお手軽吟醸や大吟醸も大流行です。

 
純 米
 原料にお米と米麹と水だけを使って造られるお酒です。新しい品質表示の規定では、精米70%以下(30%以上を糠として削り落とし、なるべく純粋なでんぷんだけにする)のお米を使うようになっています。しかし平成16年からは「醸造技術の進歩により」という理由で精米歩合が表示の条件からはずされ、日本酒のワイン法は一歩後退しました。おそらくは灘や地方の大手蔵が採用するコストダウンの酒造り方法「融米造り」によるお酒の救済かと思われます。また「大吟醸の対極にあるお酒」と称して精米の悪いお酒をマスコミが持ち上げる風潮も心配です。

純米酒を造ることは、たいへん難しく、美味しい純米酒を造るのは至難の業です。成功している蔵は、数えるほどしかありません。純粋好きの日本人、ほんもの表示の好きな日本人、だから純米酒がほんものとされています。なにがなんでも純米酒! の消費者の要望から「不出来な純米酒」が一見美酒に加工されて売り出されています。表示だけがりっぱでも、ちゃんと造りが成功していなければ意味がありません。

 
 特別純米
純米酒ですが、さらに精米を高度にして60%以下にした純米酒は「特別純米酒」と名乗ることができます。精米歩合だけを見ると60%以下ということは「吟醸酒」を名乗るお酒と同じですが、低温で発酵させないために製法が違うということで吟醸酒とは名乗れません。また酒造好適米を50%以上使用した時には70%以下の精米でも「特別純米酒」が名乗れます。平成16年からは純米酒の規定から精米歩合がはずされましたが、特別純米酒は従来通りです。良心的な酒蔵さんは今後も自慢の純米酒にこの表示を使うと想像されます。この中から良いお酒を選ぶのが賢明でしょう。
 
 本醸造
純米酒の原材料名に、醸造用アルコールが追加されたお酒で、アルコールの添加量が多くないもので、精米歩合が70%以下のお米を使用したお酒です。少量のアルコール添加で、お酒が美味しくなるということは、元禄の頃から分っていて、高級なお酒には添加されていたようです。発酵の弱い「弱小もろみ」への柱焼酎として使われたという補強救済のための記述だけが取り上げられていますが、高価であった焼酎を搾りの7日くらい前に少量添加する「高級酒造り」の記録も「童蒙酒造記」に残っています。純米酒はどうしてもしつこい酸が出がちで、味もくどく美味しく感じられないものがほとんどです。これにアルコールを添加すると、味も香りも軽くなり、美味しくなることが多いようです。アルコール添加の悪いイメージは、太平洋戦争を目前にした昭和の時代に少ない食料を節約して、大量のアルコール添加と糖類添加で造られた「三増酒」をつい最近まで造っていたことへの業界の反省もあり、反動として過度に「アルコール添加は悪いこと」となっていると思われます。規定では「本醸造」を名乗れるお酒は、白米1トンあたり100%換算のアルコールを120L以内の量を添加したものだけです。実際の添加は、度数30%くらいにうすめたものが使用されます。だいたいお酒の10%くらいの感じでアルコールが添加されています。規定量以上に添加されたものは「本醸造」を名乗れず、アルコール添加酒となりますが、表示がないために原材料表示に書かれている表示を見て判断するしかありません。残念ながら、原価を下げるために「目一杯アルコールを添加」しているお酒もたくさんあります。「アルコール添加酒を飲むと頭が痛くなる。やはり純米酒のほうが・・・・・」と翌朝思わせるのは、この手の「目一杯アル添酒」です。美味しいお酒を造っている酒蔵さんの多くでは、本醸造規格ではなくもう少し添加量の多いものを造っていることが多いようです。普通酒(吟醸酒以外のお酒)を造るにはアルコール添加140Lくらいが一番造りやすいようで、160Lとかそれぞれのお蔵でそのお酒が活きる添加量にしています。また吟醸酒の場合のアルコール添加は「本醸造(120L添加)規格」ではないことがほとんどです。120Lではなく、70Lとか10Lなどと少量です。原材料名にアルコールの名があったとしても、「本醸造規格」以下の添加量であることもあるということです。
 
特別本醸造
 本醸造規格のお酒で精米歩合が60%以下のお酒は「特別本醸造酒」と名乗ることができます。吟醸酒と同じ精米歩合ですが、製法が違うために吟醸酒ではありません。また酒造好適米を50%以上使用した時には精米が70%以下でも「特別本醸造酒」が名乗れます。 神田和泉屋でもっとも日本酒としておすすめするのがこのタイプのお酒です。 冷やでもお燗でも楽しめるお酒たちです。
 
アルコール添加酒
 実際にこの表示がされているお酒は存在しません。原材料名に「醸造アルコール」と書かれているのに、ラベルには「本醸造」や「吟醸」の表示のないお酒です。しかし全国一律にどのお酒にも添加量が決められているのも不思議な話です。ちょっと多めに添加して力強さを出しているお燗酒もたくさんあります。ちなみにドイツではワインのランキングにぶどうの熟度の違いを使っていますが、全ドイツをひとつではなく、大きく数地域に分けて、熟度の違いを決めています。もっともハードルの高い地域は南地方のフライブルクのあるバーデン地域です。このことに対して生産者から文句などはまったく出ていません。
 
糖入り酒
 実際にこの表示がされているお酒は存在しません。原材料名に「醸造用糖類」とか単に「糖類」とかかれているお酒がこれです。大吟醸、吟醸、純米、本醸造にはこの糖類を添加することは許されていません。地元消費用に原価を押さえて造られたお酒に見ることができます。甘みにお酒の欠点を隠す働きがあるためです。過度な炭素ろ過で旨味まで失うことを避けて添加されるケースもあります。この場合添加される「糖類」は、昔の三増酒のように砂糖とかグルタミンソーダ(味の素)ではなく、三増酒といわれる甘いお酒そのものが糖類として添加されます。このように今では三増酒は、単独で商品になることはありませんが、過去にこのお酒が市場に出回っていたために「醸造用糖類添加」即「三増酒そのもの」であるとして下等なお酒と極めつけている風潮があります。しかし肉体労働を仕事とするひとたちには若干の甘みのあるお酒が好まれることもあり、炭素ろ過を控える代わりの糖添加ではなく、添加の必要のないお酒にも糖が添加されている場合もあります。最近の「融米造り」などに比べれば「三増酒」は造りのセオリーを守ったお酒です。一概に安酒と決めつけられません。日本酒造りは料理作りによく似ています。やはり「煮付け」には砂糖は必要なのです。おもしろいことにヨーロッパのワインの世界では、原料ジュースに糖分の添加を認めていますが、シャンパンを除くと、できあがったワインに糖類の添加は原則として認めていません。日本では出来上がったお酒への糖類添加は可、しかし原料に糖分を添加することは不可です。
 
山廃、速醸、高温糖化酒母
 どこの国のどんなお酒も、酵母菌(イースト菌)が糖分を食べて、アルコールと炭酸ガスを出すという微生物の生活を利用してお酒を造っています。しかし他の国のお酒造りと日本酒造りの最大の違いは、酒母作りとそこでの乳酸の利用です。
  酵母菌は使用する時点で大量に培養(酒母造り)されますが、日本酒は唯一開放タンクという密閉されていない容器で造られ、酵母菌の大量培養も小さな開放タンクで行われます。
  厳寒の冬の早朝、雑菌がまだ活動しない時に作業が行いますが、それでも雑菌の混入があります。この雑菌の繁殖を押さえるために、天然の乳酸菌を呼び込んで乳酸を作らせ、その乳酸に雑菌を押さえ込ませ、出てくる糖分を酵母に独り占めさせ、この糖分をエネルギーにして増殖させています。
 もちろんこのようなことが分ったのは明治になってお酒が科学されてからですが、それまでは経験的に行われていたのです。この昔からの酒母作りを「生もと」(きもと)と呼んでいます。
  山廃はその一種で作業の中の「山卸」という重労働を省いた酒母の育て方で、山卸を廃止したために「山廃」と呼ばれています。一方同じ頃、製薬会社で購入した乳酸を直接添加し、その瞬間から多酸の状態にして雑菌を押さえる「速醸」という酒母の育て方も開発されました。どちらも明治の末ころの発明です。今現在のお酒のほとんどは「速醸」ですが、特徴として軽やかで上品なお酒ができる傾向があります。生もと(山廃)は味の多い、比較的酸の多いお酒となる傾向があります。表示にないものは速醸酒母を使用したものです。どちらが上とかという問題ではなく、どんなお酒を造りたいかで選ばれます。また蒸し米や仕込み水を高温にして、無菌状態を作り出し、冷ましながら酵母菌と乳酸を添加する「高温糖化酒母」というのもあります。気候温暖な九州などで行われています。やや豊かさに欠けますが、やわらかくフルーティなお酒ができあがります。
 
BY(酒蔵年度)と新酒、古酒
 酒蔵年度は「新米」を基準にした年度です。人間の年度はもちろん1月1日から12月31日ですが、7月以前には米の収穫がないことから、7月1日より翌年の6月30日までを年度としています。会計年度が4月から翌年3月末までとなっているのと同じような感じです。 市場に出ている「古酒」は、長期貯蔵したお酒で、中国の老酒のような独特の雰囲気をもったお酒のことですが、醸造の世界では、7月1日から新しい酒造年度(BYブリワリーイヤー))となるために、それ以前に造られたお酒はその日以降「古酒」となります。古酒には純米酒、本醸造あるいは糖入酒などさまざまな古酒があります。また吟醸酒の古酒、さらに「大吟醸酒」「純米吟醸酒」の古酒などもあります。単に年数が経っただけのお酒と十年後二十年後の姿を思い描いて造られるお酒もあります。
 
原 酒
 割り水をしていないお酒のことです。一般的にお酒はアルコール度数20%ぐらいでき上がり、出荷の時点で割り水をして、度数16%前後に調整するので、原酒というと高いアルコール度数のお酒と思われがちですが、大吟醸酒の原酒には度数17%ぐらいのものも多く、また低アルコールのお酒には14%に仕上がるものもありますので、原酒即高アルコール(強いお酒)とはいえません。また原酒には、生の原酒と火入れ殺菌した原酒とがあります。
 
樽 酒
 日本酒は昔から造る桶も杉、貯蔵も杉、運ぶのも杉でした。杉には樟脳が含まれ殺菌効果があると言われています。貯蔵中の桶のふたの点検のための穴にも杉の葉が束ねて差し込まれ、雑菌が入るのを防いでいました。新酒ができたら杉の枝を束ねて軒に吊す合図も今は酒林(さかばやし)=杉玉として残っています。ガラスの瓶が出るまでは日本酒はすべて樽に詰められ輸送されました。この樽から一升徳利に詰め替えられて家庭の食卓にあがりました。日本酒には杉の樽の香りが当然のように付いていました。今ではこの樽の香りは人気があり、近代的な蔵からも売り出されています。しかし中には木のくずを入れて香りをつけているなどと噂されているものなどもあります。当然のことながら中に入っているお酒のレベルが低くては美味しい樽酒というわけにはいきません。
 
生 酒

 火入れ殺菌をしていないお酒のことです。さらに搾ったままの原酒規格の生酒と割り水をした生酒があります。 生酒には以下の3タイプがあります。

  • 生原酒 - 冬の造りのある間に出荷される、搾りたての原酒です。
  • 生詰め - 夏に売り出される、貯蔵時に一回火入れしたお酒です。搾られた原酒は、一回火入れ殺菌されて貯蔵タンクに入れられ、味の乗るまで熟成させます。この状態のお酒を瓶詰め発売したものです。
  • 生貯蔵(生貯) - 夏まで生酒のまま冷蔵庫にしまっておいて、売り出しの時点で一回火入れをしたものです。
 
米の種類  詳細
 大きくラベルの真ん中に表示しているお酒も見かけますが、ない場合が多く、あっても瓶の裏側などに他の表示と一緒に書かれているのが普通です。さらに麹米○×とか掛米○×とか書かれている場合もあります。どんなお米がどこに使われたかの表示です。
 
精米歩合 精白歩合
 お米の種類とともに書かれていることが多くあります。どの程度の精米をしたかの表示です。小さな数字ほど高度精米をしたということになりますが、精米技術の良否によって実際の歩合(真正の精米歩合)とはかなりの差が出ます。通常は削り落とした糠の量を差し引いた「見かけの精米歩合」が表示されています。精米歩合は残ったお米の量、精白歩合は糠の量です。大吟醸酒の精米歩合は50%以下、吟醸は60%以下、良心的な酒蔵の精米歩合は純米酒や本醸造酒でも60%くらいが多いようです。
 
粕歩合
 もろみはアルコール発酵が終わると搾り器にかけられ、清酒と酒粕にわけられます。精米歩合が良いほど良質なお酒となる傾向がありますが、粕歩合も多ければ多いほど上品なお酒となります。通常の晩酌酒でおよそ20%くらい、特別純米酒や特別本醸造酒で25%くらい、吟醸酒や純米吟醸酒で35%くらい、まともな大吟醸酒ですと50〜60%の酒粕が出ます。融米造りですとほぼ0。
しかし酒造技術が未熟だと麹の糖化酵素が十分に作られず、やたらと粕の多いお酒になることもありますから、この数字だけで良酒と判断できないこともあります。
 
もろみ日数(発酵日数)
 大きなタンクの中で蒸した米は麹米で糖化され、酵母に食べられてアルコールと炭酸ガスを発生させます。この発酵に必要な日数はいろいろですが、普通のお酒で20日くらい、吟醸酒で30日くらい、大吟醸酒で35日から50日くらいかかります。その間に経験のある杜氏や蔵人は泡の状態などを観察、香りや味も調べ、さらに毎日もろみをろ過して内容を分析、目的とするお酒に向けて調整を行います。農産物加工品のワインと違って、日本酒造りは、麹の作り方、酒母の育て方、そしてこのもろみの管理で「設計した通りのお酒」に仕上げていきます。そして搾りの時期を見定めます。
 
酵母
 お酒造りの主役で糖分を食べて炭酸ガスとアルコールを発生させる微生物です。パンを発酵させるイーストと同じ仲間です。お酒造りに向いた優れた性質のものが醸造協会で純粋培養され、協会7号、9号、10号などと命名され全国の酒蔵に頒布されています。また各蔵で培養されたものもあります。最近ではやたらと香りを出す「バイオ酵母」と呼ばれるものも盛んに使われていますが、日本人のこころを癒すお酒は造れないようです。
 
日本酒度
 酒の比重を尺度とした数値。マイナスの値が大きくなればなるほど、比重は重くなり、糖度が多いことを示し、それだけ甘いことになりますが、この数字は酸度との関わりが深く、同じ日本酒度でも酸(酸度として表示)が多ければ辛く、少なければ甘く感じます。お酒の原料であるお米が麹の糖化酵素で甘みに変えられ、糖分を含んだ液体の比重は水に比べて重たくなります。しかしそれが酵母菌に食べられると少なくなり、軽くなります。アルコールが出れば出るほど軽くなり、同時に醸造酸が出てきます。吟醸酒の日本酒度は+5から+7くらいが多いのですが、酸が少ないこととやわらかい味わいで辛さを感じさせません。この日本酒度と酸度を縦横としてお酒のタイプを分けるグラフがありますが、実際に飲んだ印象と違うことが多く当てになりません。お米や水の性質の違いや発酵温度などさまざまな要素が他にあるせいと思われます。このため立地の異なった酒蔵さんのお酒を比較するのには使えません。
 
荒走り
お酒造りの最終段階、搾りの時点でもろみに圧力を加えず自然にしたたり出た部分のお酒。「中取り」は少し圧力を加えてしぼった部分のお酒。「押切り」は高圧力によって搾られた部分のお酒。通常良心的な酒蔵さんでは、大吟醸酒を搾った場合には、この部分は大吟醸酒とせずに他のお酒に混ぜてしまうことが多いようです。しかし、これらの「荒走り」「中取り」「押切り」の境は、それぞれの蔵によってかなり違い、極端な例では「荒走り」は最初のほんの少しで(濁って雑味が多いために)取り除いている蔵もあります。そのためその蔵では「中取り」と名乗っている部分が「荒走り」に相当しています。 名前の良さから「荒走り」が珍重され? ている感がありますが、それぞれの部分によって味や香りの違い、また飲む時期によっても感じが変りますので、どの部分が一番とは一概には言えません。
 
米だけの酒
平成16年に「米だけの酒」の表示について規制ができました。「米だけの酒」と書かれていれば「純米酒」と思ってしまうのが普通ですが、実は「純米酒」ではないのです。規制では「純米酒の文字のわきに『純米酒ではありません』と表示する」ことを求めています。いったいどうゆう意味なのでしょう? 以前は「純米酒」は70%以下の精米が必要でしたが、平成16年から精米の数字の規制はどういうわけか外されました。ということは、精米歩合が悪いからということで「純米酒」が名乗れないということではありません。「純米酒」を名乗るためには、そこで使用する麹の量が15%以上でなければならぬと「特定名称酒に関する法律」で規制されています。どうやらその基準を満たしていないお酒ということになります。酒造りでもっともコストのかかる麹の使用量を低くして、薬品会社から購入した糖化酵素で米のでんぷんを糖化して酒造りをしているもようです。ライトライトの傾向の今の時代、価格も安く味のさらっとしたお酒、それも「米だけ」の表示が「純米酒だけがほんもの」と信じ込んでいる消費者に受ける、、、